5、「津波てんでんこ」の正しい使い方


東日本大震災の後、防災においてよく聞く言葉に「津波てんでんこ」があります。
この言葉の意味は「津波のときは、てんでんばらばらで逃げろ」という意味になります。
補足すると、お父さんもお母さんもお兄さんもお姉さん、妹も弟も子どももおじいちゃんもおばあちゃんもみんなバラバラに人の事を気にせず自分だけ逃げなさいという意味です。
聞き様によっては極めて薄情なアドバイスに聞こえます。果たして親が自分の子どもを置いて逃げる事ができるのでしょうか。

おそらくそのような事はこの言葉を単純に聞いただけでは出来ないでしょう。皆様にも大切な家族がおられると思いますが、もしも大きな地震があったとき、家族と一緒でなければ、まずは安否を心配するでしょう。もしあなたが外出していて、さらに携帯電話がつながらなければ身内が自宅にいるはずであれば自宅に確認にいくのは当たり前の事です。普通の人間ならそうします。しかしこの言葉を先人たちが残してくれたのには理由があると思います。それは当たり前の「家族の絆がかえって被害を大きくする」という悲しい歴史を繰り返してきたからです。どういう事かというと、子どもが家にいて親が買い物か何かで出かけている時に大地震が来たとします。子どもは地震が来たら津波が来ると教えられていたのですぐに高台に走って逃げました。しかし親は子どもが心配で本当に逃げたかどうが確認しに家に帰ってしまい、津波に巻き込まれて死んでしまいました。親が子を思う気持ちが仇になって親だけが死んでしまう。又は親子双方が心配になって戻ってきて一家全滅してしまう。このような悲劇が幾度と無く繰り返されてきました。

つまり「津波てんでんこ」という言葉を家族全員が正しく理解して行動しないと全く意味をなさない言葉になってしまうのです。具体的には以下のように理解するべきです。

まずは大人も子どもも一人一人が自分の命に責任を持つという事です。そしてさらに家族全員が自分の命は自分で守るという事を認識していると信頼しあう事です。子どもは「お母さんはきっとちゃんと逃げてくれているだろう、だから僕も決めていた場所まで逃げればお母さんと必ずあえる」と考えて逃げる、お母さんは「うちの子は絶対に逃げているはずだ」「どの避難所かわからないけど、まずは逃げて生き残ってから探しにいけば必ず見つかる」「自分だけ逃げ遅れて悲しい思いをさせてはいけない」このように家族全員に信頼関係があってこそはじめて成り立つと考える事が「津波てんでんこ」の正しい理解なのです。

家族全員が自宅に全員いる時間に地震や津波が襲ってくるとは限りません。むしろ現代においては平日の日中は両親共働きで子どもは学校や保育所にいっている事のほうが多いはずです。いざという時にどこに逃げるか、どうやって連絡を取り合うかという事を決めておく事は大切です。

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