4、脅しの教育、知識の教育、姿勢の教育


自動車の免許をお持ちの方は3年ないし5年に1度更新にはいかれた事があるかと思います。その時に見せられる30分程のビデオでは自転車が飛び出してきて車と衝突したり、交差点で右折者が突っ込んできて事故をする映像を見せられます。確かに殆どの方はその後運転をするときにはビデオで見た内容を覚えていて安全運転を心がけると思います。しかし人間は恐怖という感情をかかえたまま生きていくことができません。人間には都合の悪い事を忘れるという能力が備わっています。そのおかげで恐怖心によって感じたストレスを解消して精神の安定を保てるわけです。

防災においてこのような脅しの教育が行われる事があります。例えばスマトラ島や東日本大震災の津波の映像を見せられて、津波は怖い、死にたくなければ逃げなければいけない。確かにその時は頭では逃げないといけない事はわかります。しかし前述のように時が立てば忘れてしまいます。さらにそんな津波の来る危険のある地域にこのまま住みたいとも思わないでしょう。だからといって、他の地域に引っ越したからといって、洪水があったり山崩れがあったり命の危険が完全に無くなるわけではありません。また、津波の危険のある地域といえば海の近くです。わが国日本は四方八方海に囲まれた国家であり、長い間海の恵みを享受してきました。にもかかわらず海が怖いぞと一面だけを切り取って教えることが正しい教育ではありません。

また、防災教育においては単純に知識だけの教育だけでは足りません、なぜなら、過去にここまで津波が来たとかいう知識は時に想定にとらわれる事になるからです。またその知識すら過小評価を知らず知らず行ってしまい、いざという時の判断を間違える事にもなります。人間は自分にとって都合の悪い事は低く見積もり、自分にとって都合の良い事は高く見積もる性質があるからです。例えば交通事故で年間約4000人の方が亡くなっておられます。しかし自分が交通事故で亡くなると思っている人はいるでしょうか。逆に年間4000人しか当選しない宝くじに対して行列を作って買い求め、買ったときにはあたかも当選してさらにそのお金をどのように使うままで想像をした事はありませんでしょうか。同じ4000人という数字でも自分にとって都合が良いか悪いかでこうも違うのです。

つまり、「脅しの教育」も「知識の教育」も間違いなのです。防災教育においては人間のこういった心理的な特性を踏まえた災害に向き合う「姿勢の教育」をしていないといけません。

沿岸部であれば津波に正しく備えることが、その地に住むための作法であって、大自然のからの恵みをたくさん享受して、豊かな生活を送れているからこそ、時に自然のふるまいに対しても上手に付き合いをしないといけないという「姿勢」から教えるべきでしょう。

 

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